登場:男子女子
男子タイマーってどこだよ。確か入って右側って言ってたよなー……あれ、左だっけ?ん、ここ案外奥まであるな。てかボールとコーン多過ぎだろ。……よいしょっと。あーねえじゃん。佐藤の奴テキトー言いやがって。そもそも忘れたのあいつなのに、何で俺が取りにこなきゃなんねえんだよ。……お、足音。誰か来たかな。すんませーん、ちょっと探し物してるんですけどー……。
(用具室の鍵が閉まる音)
男子……っええ!?閉められた!!?
(遠ざかる足音)
男子おいおい、まじかよ!くっそ、ぜってー用務員のじいさんだ!(あの人耳遠いんだよなあ……)ちょっと!いるんですけど!おい、開けろってー!!!あー…………まじかあ(大きな溜息)。窓もねえし、何かくせえし、最悪なところに閉じ込められちまったなあ……。あっちいし、壁冷えてねえかなー……。
(男子生徒しゃがみ込む)
(何かが傍にいることに気づく)
男子んうぎゃああああっ!おばけ!
(隣に女子生徒が座っている)
女子おばけ……じゃない、です。
男子え、に……人間?
女子人間、に見えない?ですか……やっぱり。
男子え、『やっぱり』……って何?いや、ごめん、先に訊いたのは俺だけど。今は、ちゃんと、人間に見える、よ。
女子幽霊、って言われるんです。クラスの人たちに。
男子ああ、そういうこと。あー……髪型じゃない?目とか、隠れちゃってるし。
女子髪を、切ればいいですか……?そうしたらいじめられませんか?
男子きみ、いじめられてるの。
女子はい。中学から、ずっと。顔や話し方が気持ち悪いって。
男子そりゃひどいね。んー俺からは……。
(女子の前髪を持ち上げて)
男子すげえ可愛い女の子にみえるけど?
(女子、顔を赤くして)
女子か、か、か、からかわないで下さい。
男子ははは、反応も可愛い。んじゃあさ、話す練習してみる?もっと自信もって、ハキハキ喋れるようにさ。
女子自信……ってどうしたらもてますか?
男子んー、そうだな。じゃあ俺に告ってみ?
女子んへっ!?
男子『好きです』って、言ってみ?
女子むむむ無理ですよそんな……!恥ずかしい……。
男子じゃあ『おはよう』は?
(女子、顔を赤らめながら)
女子お、おはよう(小声)。
男子そうそう、顔上げて、上目づかいで。ほら可愛い。じゃあ次、『さようなら』。リピートアフタミー。
女子さ、さ、さようならっ。
男子笑って、にっこり。うん、いい感じ。ついでに前髪もピンでとめてみようか。俺の母ちゃん作、カエルのマスコットつき。
(男子が女子の前髪をピンでとめる)
女子絶対似合ってない……。
男子ちゃんと似合ってるよ?おでこ丸くて赤ちゃんみたいにつるつるだし。
女子それ褒めてます……?
男子褒めてます、褒めてます。
女子それは、……ありがとうございます。
男子はい、下向かない。俺の目見て。逸らさない。こっち見て。これ最後ね。
女子はい。
(見つめ合う二人)
男子『好きです』って、言ってみ?今度こそ。君なら言える。
女子あ……う……す…………すっ。
男子うん。
女子好きです……(赤面涙目)。
(男子、女子の頭をポンポンして)
男子上出来、上出来。これが言えたらたいていのことなんて恥ずかしがらずに話せるでしょ。自信もって!
(女子、ひいひい泣き始める)
女子……ひどいです。私で遊びましたね?
男子え~真面目にアドバイスしたよ?大丈夫、もうこんな恥ずかしいこと言わせないから。はははは(満足そうに笑う)……あっ、先生遅いってー。
(体育教師がやって来て用具室の鍵を開ける。二人とも安心した様子で外に出る)
(女子、男子に頭を下げて)
女子お世話になりました。
(男子もお辞儀を返す)
男子いえ、こちらこそ。んじゃ、またご縁があったら。
女子……先輩。
(男子、振り返って)
男子ん?
女子好きです(凛と)。
(男子、呆然と佇む)
(女子、照れたように微笑みながら)
女子前髪切ったら、これ、返しますね。では、また。
(男子、会釈をして歩いていく女子の背中を見つめ、呆けたように)
男子おーわーーー、まーーーじかぁ…………。