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1人語りで男性が運命とも言える出会いをする物語です。SE等はありません。お気軽に読んでいただけたら嬉しいです!
りょう
作家
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本文
花の匂いのする人だった。
たぶん最初に会ったのは、街中ですれ違った時。
二度目に会ったのは、駅のホーム。
すれ違った時に、ふと鼻をかすめた香りが覚えのある匂いだと気づいた時にはキミの姿はもう見つけられなかった。
三度目は、混み合う休日の交差点。
横断歩道を渡り振り返ってみたが誰の香りかまでは分からなかった。
一緒にいた友人に、花の匂いのことを伝えたが気づかなかったという。
僕が香りに敏感なわけではない。 香水などにも疎い。
でもなぜかキミの香りだけは脳に強く焼き付いた。
キミの香りを求めて、初めてアロマの店に行った。 店員さんに香りのイメージを伝え、何種類もサンプルを出してもらう。
そしてついに、キミの香りが見つかった。
その名前はサンダルウッド、白檀(びゃくだん)というらしい。
お香タイプのものを一箱購入し、家に戻った。
1本火をつけ白檀について調べてみる。
どうやら花の香りではなく、樹木の中心や根っこに蓄えられるものらしい。こんなに甘い香りなのに花ではないことに驚いた。
白檀には、お寺のような神聖なイメージとそれとは真逆の「人間や動物を本能的に惹きつける」「理性を狂わせる」といった、誘惑や魅惑、媚薬にまつわる話もたくさん存在しているようだ。
インドでは「白檀の放つ官能的な甘い香りは、冷徹なヘビの心さえも狂わせ、理性を奪って木に縛り付けてしまう」という、一種の「抗えない誘惑」の象徴として描かれることもあるらしい。
抗えない誘惑…その言葉が何故か心に響く。
ぼーっとスマホの画面をスクロールしながら、僕はいつしか眠りについていた。
夢の中にまだ見ぬキミがいた。
柔らかなベッドに横たわる僕の上に乗り、キミは僕を見下ろしているようだった。
真っ暗な部屋の中は、シルエットしか見えないキミの甘い声と白檀の香りが支配している。
キミの肌が熱を帯びていくとその匂いは一層濃さを増していき、狂おしいほどに甘い匂いが僕を包む。
その匂いは僕の理性を内側からじわじわと焼き尽くすようだった。
僕は香りの源へ引き寄せられるように、キミの細い首筋に狂ったように顔を埋め、その不埒な甘さにどこまでも深く溺れていく。
僕たちは甘美で官能的な行為に酔いしれる。
まるで白檀にまつわる昔話のように理性を失い、狂ったように相手を求め続けていた。
永遠にこの時間が続けばいいと思いながらキミと激しく愛し合う。
大きくのけ反ったキミの身体を強く抱きしめながら僕はキミの中で絶頂を迎えた。
…ふと目が覚める。
現実へと引き戻された僕が思うことはただ一つ。
「必ずキミを見つけ出す」
この台本を声優が演じた音声です。「文字が、声になる」瞬間を聴いてみてください。
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