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早苗沼シリーズ。若くして統括部長になった織原早苗。厳しく、時に優しく接する彼女に惚れ込む社員が絶えず、陰で「早苗沼」と呼ばれるようになる。 そんな彼女の独白を1000字程度にしました。 演じるときは、前半を硬く抑えて、後半の「全部、見ているわ」から少しだけ本音が漏れるようにすると、早苗沼が深くなるかも。
谷澤桃佳
声優作家
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ライセンス: 個人利用のみ
本文
(夜。社員のいなくなったオフィス。早苗は一人、部下の提出資料を確認している)
……また、ここ。
数字は合っている。形式も崩れていない。
けれど、この説明では相手に伝わらない。
佐藤くん。あなた、昨日も遅くまで残っていたでしょう。
隠しているつもりかもしれないけれど、分かるのよ。
保存時刻を見れば、何時まで作業していたかくらい。
まったく……。
努力すれば許されると思っているなら、大間違い。
仕事は、頑張った時間ではなく、出した結果で判断される。
……私も、昔そう言われた。
悔しかった。
眠る時間を削って、誰よりも働いたつもりだった。
それなのに、たった一か所のミスで全部を否定されたような気がして。
だから、決めたの。
二度と間違えない。
誰にも助けを求めない。
弱いと思われる隙なんて、絶対に見せないって。
おかげで、こんなところまで来てしまった。
部下からは怖がられ、同期からは近寄りがたいと言われ、上司からは「君なら一人でできる」と仕事を増やされる。
便利でしょうね。
何も言わずに、何でも片づける人間は。
……だからこそ、あなたには同じやり方をしてほしくない。
分からないなら聞きなさい。
失敗したなら認めなさい。
できないことまで一人で抱えて、倒れることを責任感とは呼ばない。
それを本人に言えばいい?
無理よ。
優しく言えば、あなたはきっと安心する。
「このままでいいんだ」と、立ち止まってしまう。
だから私は叱る。
足りないところを指摘して、何度でもやり直させる。
あなたが自分で、自分の成長に気づくまで。
……期待している、なんて言わない。
そんな言葉で、簡単に喜ばせたくないもの。
でも、見ている。
昨日より説明が短くなったことも。
会議で一度だけ、自分から発言したことも。
失敗した後、誰にも言われず修正案を持ってきたことも。
全部、見ているわ。
(資料に赤字を入れ、少し考えてから一行だけ書き加える)
「方向性は悪くありません。明朝、再提出してください」
……これくらいでいい。
褒めすぎれば調子に乗るし、突き放せば自信を失う。
人を育てるなんて、本当に面倒。
それでも。
いつかあなたが、私の手を借りずにこの資料を完成させたら。
その時くらいは……そうね。
「よくできました」と、言ってあげてもいい。
(小さく笑い、すぐに表情を戻す)
……明日の朝までに、ね。
この台本を声優が演じた音声です。「文字が、声になる」瞬間を聴いてみてください。
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